アルコシュ

ドホークの南、モースルから北に45kmに位置する人口1万人ほどの集落。住民はカルデア・カトリックを中心とした、アッシリア人キリスト教徒が100%で、異教徒の居住は認められていないという。そのため、多くのクルドの人々にとって、アルコシュは馴染みのない場所のようだ。

集落の起源は古代に遡り、泥造りの街並みに、古の情緒あるアッシリアの教会が点在する。古代言語であるシリア語が今なお日常で使われる、生きた化石のような町だ。

2014年のIS台頭時には、歴史あるニネヴェ平原のアッシリア人集落が相次いで陥落する中、アルコシュまでも3kmと迫り、多くの住民が避難したが、地元の有志が立ち上がり、間一髪で死守した。車に乗せてくれた若者もNPU(ニネヴェ平原防衛隊)の一員だったが、彼らにとってアッシリアの伝統とは、自らの命を賭してでも守るものなのだろう。

最大の見所は、町の郊外およそ2kmの崖の中腹に位置する、7世紀に創建の聖ホルミズド修道院。2016年に訪れた際には、ISとの前線からわずか15kmにあり、静寂に包まれる修道院からも空爆の音を耳にし、皮肉にも禁断の地としての趣を増していた。ISの脅威が遠ざかった今、人々の日常生活は平穏を取り戻しつつあるように見えた。

入口の検問は入念で5分ほど要した(2016)

旧市街は入り組んでおり、家々は泥で造られている(2016)

イースター当日で、カラフルな洋服を着た子供をよく見かけた(2017)

自宅に招いてくれた品の良いご家族(2017)

おめかしした少女(2017)

イースターエッグにお菓子、果物をたくさんいただいた(2017)

穏やかな面持ちのお母さん(2017)

丘の上から見下ろすアルコシュの旧市街(2017)

町の入口付近の丘には墓地が広がる(2017)

新しいアッシリア教会も古代の趣がある(2017)

写真・文:田村公祐

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