聖マタイ修道院

モースルの郊外、アルファフ山の頂上近くに、シリア正教の古い修道院が残っている。4世紀の隠遁者の名を冠した修道院には、このような伝承がある。

時のアッシリア王センナケリブの息子ベーナムは、狩りの最中に迷って洞窟で一夜を過ごし、導かれるように聖マタイと出会う。不思議な力を感じた彼は、らい病を患う妹のサラを連れて来ると、聖マタイは奇跡で病を癒し、感謝したベーナムとサラはキリスト教に改宗した。ところが、それが気に入らない王は、怒りのあまり二人を処刑し、自身も気が狂ってしまう。息子ベーナムの姿を夢に見た王妃は、錯乱する王を聖マタイの元に連れて行ったところ、王はようやく我に返った。自らの過ちを反省した王は、聖マタイに洗礼を授かり、返礼として修道院を建てたのだった。

ISの侵攻が続いた2年の間、この修道院は常に前線から3kmに置かれていた。しかし、眼下で激しい戦闘が絶えない中でも、聖職者たちは自らの運命を天に委ね、決してここを離れようとしなかったという。結果、ISが到達することはなかった。ペシュメルガの部隊が持ち堪えたのだ。

長年の憧憬ゆえか、いくつもの検問を越えて辿り着いたからだろうか。眼下に広がるニネヴェの平原は、神々しく光を放っているかのようだった。

修道院へと続く道 (2017年4月)

今は車で登ることができる (2017年4月)

手前から修道院を望む (2017年4月)

ここで許可を取って中に入る (2017年4月)

石造りの荘厳な建物だ (2017年4月)

修道院の入口 (2017年4月)

内部には難民数家族が暮らす (2017年4月)

十字架の後方が最初期の建物だ (2017年4月)

全てを包み込むような穏やかな司祭 (2017年4月)

許可を得て内部に入る (2017年4月)

古代言語であるシリア語が刻まれている (2017年4月)

神々しい鐘楼 (2017年4月)

巡礼路は天上への階段のようだ (2017年4月)

写真・文:田村公祐

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