聖ベーナム修道院

古代末期、ササン朝ペルシャ下のアッシリアの王子と王女、ベーナムとサラを祀った修道院です。

らい病を患う妹のサラを救うため、隠遁者マタイの不思議な力を頼ったベーナムは、妹の病が快癒したことに感謝し、ともにキリスト教へと改宗しました。しかし、父である王は、アッシリアの伝統宗教を捨てたことに激昂し、二人を殺してしまったのです。後に王はそのことを悔い、二人を祀ってこの修道院を作ったと言われています。

当時はネストリウス派の修道院でしたが、時代とともに移り変わり、現在はシリア・カトリックの管理となっています。

過激派組織ISが台頭した際には、この修道院も占拠され、ベーナムとサラの廟は爆破されました。修道院にも爆発物が仕掛けられましたが、奇跡的に不発となり難を逃れました。現在は修復が進み、壁一面の落書きは一掃され、ベーナムとサラの廟も再建されています。

メソポタミアの建築様式を踏襲した門 (2023年10月)

壁一面にあった落書きは一掃されていた (2023年10月)

古代末期のアッシリア人王子に由来する (2023年10月)

外観は完全には修復されていないが整えられている (2023年10月)

居住部分も綺麗になっている (2023年10月)

十字架の部分はつるはしで破壊されたままだ (2023年10月)

内部も整備されていたが、グレゴリウスと思われる絵は修復されていない (2023年10月)

簡素ではあるが祭壇は整えられていた (2023年10月)

破壊されたマリア像は入れ替えられた (2023年10月)

アッシリアの王子と王女、ベーナムとサラを祀った廟 (2023年10月)

過激派組織ISにより破壊されたが、再建されている (2023年10月)

ドアの鍵は空いており、見学は自由だった (2023年10月)

廟の隣の建物と地下でつながっている (2023年10月)

ドーム状になっている建築 (2023年10月)

なぜかマロン派の聖シャーベルやエッフェル塔の置物が売られていた (2023年10月)

2017年の様子

ISから解放されて間もない2017年4月の時点では、付近は緊張に包まれており、住民は戻っていない様子でした。修道院を警備する男性は、空のペットボトルを取り出すと、爆破されたベーナムとサラの廟から粉塵を汲み取り、聖なる砂と言って筆者に渡してくれました。そのペットボトルは、今も弊社で大切に保管しています。

キリスト教徒のイラク軍兵士が警備していた (2017年4月)

修道院は壁一面に落書きがされていた (2017年4月)

爆発物が仕掛けられたが、奇跡的に不発となり被害を免れた (2017年4月)

居住部分も荒らされている (2017年4月)

内部は片づけられていたが、壁の絵は破損していた (2017年4月)

マリア像は破壊され、新しいものが置かれていた (2017年4月)

ベーナムとサラの廟は爆破された (2017年4月)

ドームの天井が完全に崩落していた (2017年4月)

アクセス

モースルからタクシーでキルクーク方面に約40分。修道院手前の検問はスムーズに通行できない可能性あり。

写真・文 : 田村 公祐

現在 ¥0
    送料無料まで ¥10,000